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溝違いアイアン2セットの狙い/ハリントンが語る自身のクラブ論(後編)

―以前、ジョー・トゥーロン(前オデッセイパターレップであり、現キャロウェイPGAツアー部長)から、ホワイトボールのうちの1本のクラウンにヒビが入ってしまい、交換しなければならなかったという話を聞いたのですが?

ハリントン:ああ、そうそう。これまで移動中に壊れたのは、確かあの1本だけだったと思う。何かがぶつかったんだよ。

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―現在のパターはその事故にあったヘッドと同じものですか?

そう。僕はあの様なパターを何本か持っているんだ。もし僕が何か思いついたとして、自分の全盛期だったら、彼ら(メーカーのスタッフ)に望み通りにやってもらっていただろうけれど、今は彼らはやらないから。僕はより深めのパター(丈の高いフェース)が好きなんだ。僕はフェースの中心より高い位置でボールにヒットしてしまう問題を抱えているのだけど、彼らはシステム全体を改造して、僕のために深めのパターを作ってくれるわけではないからね。

これまで、目の錯覚を利用して、より中心に近い位置でボールをヒットしようと取り組んだことはあったのだけど、僕は高めの位置でヒットしてしまうんだ。それでも、ホールには入るから、そこまで気にしないようにはしている。でも理想的な話をすると、仮に誰かが僕のもとにやって来て、3、4ミリ高いパターを作ってくれると言われたら、僕は喜んで作ってもらうよ。

―では、この話が明るみに出れば、それを作ってもらえるきっかけになるかもしれませんね。

まあ、僕もそれを願っているのだけど。そのために、この話を持ち出したんだ。より深めのパターがあればとは思う。でも、彼らにはメリットがないよね?深めのパターがなければないで、僕はこのパターを使うのだから。そういうことなんだ。彼らはやる必要がないんだ。彼らがやらなければ、僕も替えないから。

でも、今はウィルソンに来て、それをやり始めている選手が増えていると思う。選手がより稼ぐようになると、メーカーへの依存度が低くなるから。選手たちがメーカーのサービスを必要とするのは、トラックにいて、色々とチェックしてもらいたいから、みたいなところはあるけれど、これからはウィルソンをより魅力的なオプションとみなす選手は増えると思う。と言うのも、14本のクラブを使わなくてもよいからね。もし、今週パターに満足できなかったとしよう。知っていると思うけど、ウィルソンはパターも作っているんだ。彼らは全てそろえている。で、ちょっとの間、何かを模索しようと思い立つわけだけど、覚えておかなければならないのは、そうなると2つのものを追うことになるということなんだ。

もし、自由契約なのであれば、多くを替えるのは良くない。そうなると、気が散ってしまうから。でも、オプションがあるのは良いことで、例えば、タイトリストの新しいドライバーが良い感じだと思ったとすると、僕は真っすぐタイトリストのところまで行って、「僕にも使わせてよ。これは最高のドライバーだと思う。僕もこれを使うことにするよ」と言うことができる。ウィルソンも承知の上でね。彼らは自分たちの選手に満足してもらい、良いプレーをしてもらいたいんだ。それでも僕は(ウィルソンのクラブを)10本使っているけれど、それは14本とボールの全てというわけではないんだ。

アイアンは最高で、そこは間違いないね。僕はこれでほとんど全てのメジャーを制覇した。彼らはあらゆる種類のアイアンを作っているんだよ。ブレードが使いたければ、ブレードもある。僕の使っている、ツアー向けの形状で、わずかながらキャビティバックになっているアイアンが良ければ、それもある。ロケットみたいに飛び出すディスタンス系アイアンが使いたければ、それもある。さっき(前編)言った4番アイアンのようなやつだね。あれはロケットだった!ああいうドライビングアイアンを喜んで使う選手もいるからね。ただ、僕の場合は5番アイアンとの兼ね合いがあったから。あれは(弾道が)高過ぎたし、速過ぎた。

まあ、これからメーカーはそういう方向へ進むのではないかと思う。僕ら選手たちは、独立していたいのだけど、完全なる独立はよろしくないというところも問題でね。若手選手たちが初めて出場する大会で、メーカーに物を与えられ、調整してもらっているのを尻目に、自分で自分のクラブを調整する、なんていう状況には陥りたくないんだ。あまりに多くを替える男にはなりたくないんだよ。

18歳以下のジュニアの大会でアイルランド代表としてプレーした時、僕はピンアイ1の偽物のゴルフクラブのハーフセットを持っていた。もう半分のセットは兄から借りたんだ。僕らは、それぞれハーフセットを持っていてね。僕が偶数(の番手)で、兄が奇数だった。その大会では、ピンのベリリウムでグラファイトのシャフトのクラブを使っている奴がいたんだ。

あれは1900ポンドしたんだよ。僕のは100ポンドで、しかも偽物だった。そう、僕は自国を代表して、偽物のセットでプレーしたんだ。あの偽物クラブを使う前、僕はクラブがごた混ぜになったバッグでプレーしていた。なんであれ、そこにあるクラブを拾って使っていたんだ。6番アイアンの方が5番アイアンより飛ぶこともあった。5番アイアンはフェードで、7番アイアンはフックが出やすいなんてこともあったけれど、僕は各クラブが何をするのか知っていたんだ。それぞれのクラブには意味があった。

面白い話をすると、ボックス型の溝が出てきたとき、これを知っている人は少ないのだけど、僕はいつもクラブを2セット持ち歩いていたんだ。僕はV字の溝とボックス型の溝(のアイアンセット)を持ち歩いていたんだよ。

―え?本当ですか?

そうなんだ。ボックス型の溝は、スピン的にラフから脱出することが不可能で、ラフが特定の深さに達すると、ボールはかなり低く出て、スピンもあるから、遠くへ飛ばないんだ。そういうラフになると、7番アイアンでも140ydほどしか飛ばず、あまりに低く出るから、木の上を越すこともできなくなる。

そういうラフのあるゴルフコースでプレーする際、僕はボックス型の溝の7番アイアンとV字溝の8番アイアンを持って行く、というようなことをしていた。もし、ラフに入って、残りが170ydだったら、僕は8番アイアンで打って、フライヤーさせていたんだ。ライ次第では、7番アイアンでは届かないし、何かの上を越すこともできなかったからね。だから木がある場合は、木を越す上で、V字溝が必要になる。ボックス型の溝では、高く上がらないから。

―これは他の人もやっていましたか?よく知られていることだったのでしょうか?

いや、他にやっている人はいなかったよ。何年かボックス型の溝でプレーしてみて、特定のラフでは、届かせるのにV字溝が必要だと気付いたんだ。ヘイル・アーウィンが、見たところ溝のないアイアンで「全米オープン」をプレーしたことがあった。フェアウェイからは、(溝の有無による)違いはないということだった。

僕は同意しないけれど、それが公式見解だったと思う。ただ、ラフからであれば、グリーンに届かせる上で、フライヤーが必要になる。V字溝がそれをやってくれていたんだ。ラフから脱出してボールを届かせるには、フライヤーが必要になるけれど、ファーストカットや軽めのラフ、あるいはバミューダ芝のラフやチップショットの場合、低く出て、スピンが効いたボールでも問題にならないこともあるからね。

―なんと。それはこれまで聞いたことがなかったです。あなたは用具のこととなると聡明ですね。

僕は、自分がいつもこの2種類の溝を駆使していたのを誰も知らなかったことが信じられないね。誓ってもいいけれど、軽いラフでもボックス型の溝であれば、7番アイアンではあそこのフェンスを越すことだってできないよ。V字溝であれば、上を越すことはできるけれどね。打ち出しの特性は、大幅に違っていたんだ。

今でも僕はちょっとそういう感じだね。全てのクラブには、それぞれの仕事があるんだ。ドローが打てる3番ウッドと、そうではないドライバーを使う、なんていうこともあるしね。自分のクラブのことを知っておかなければならないんだ。僕が言いたいのはそういうこと。

もし、僕に権限があるのであれば、(クラブの本数の上限を)12本のみにするね。そうなると、番手のギャップを埋めるのに、自分の技量が必要とされるから。そうなったら、僕は3番と5番ウッドを外して、恐らく4番ウッドを入れるだろう。多分、ウェッジ4本はそのままにして、6、7、8、9番アイアンあたりの範囲でギャップを作り出し、番手間の間隔を10ydから12~14ydほどに広げることになるだろうね。12本のクラブであれば、かなりシンプルになるけれど、10本となると、かなり難しいね。

―私は8本が良いと思うのですが…

12本で行こう。僕らは12本であれば、事足りるだろうけれど、8本はまだやめておこう。まずは12本だよ。その上で8本にして良いかどうか、うかがいを立ててみよう。

(協力/ GolfWRX, PGATOUR.com)

情報提供:PGA TOUR

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