オデッセイ VERSA JAILBIRDの試打レビュー 口コミ・評判 ギアスペック
2023年 トラベラーズ選手権
期間:06/22〜06/25 場所:TPCリバーハイランド(コネチカット州)
9年モノのパターはいかにしてPGAツアーを席巻したのか
「成功は何かしらのヒントを残すもの」というのは、PGAツアープレーヤーであるクレイマー・ヒコックの言葉である。その成功により、オデッセイ バーサ ジェイルバード(VERSA JAILBIRD)パターのドミノ効果がPGAツアー、ひいては市場全体を席巻している。
ここ2週間でウィンダム・クラーク(全米オープン)とキーガン・ブラッドリー(トラベラーズ選手権)が、このクラブを使用して優勝した。このパターは、リッキー・ファウラーの復活でも重要な役割を担った。この3人は全員、長めのスーパーストローク製グリップを装着している。
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一体、何が起こっているのか? 現在のトレンドと経緯を解明するにあたり、まずこのパターの誕生まで時を戻してみよう。
オデッセイ バーサ ジェイルバードは元々、2012年7月にパター設計者のオースティー・ローリンソンによりスケッチ画が描かれた。一般向けのリリースは14年1月。
キャロウェイのレップ、ジョニー・トンプソンは、最近公開されたキャロウェイの“ワールドワンダー”にて、「2013年のソニーオープンでバーサをローンチしました。4週後のAT&Tペブルビーチプロアマでは、実戦で15本が使われていました。これは、世界最難関のツアーの場においては、新製品が実戦で使用されるということに関してかなり大きな伸びだった。これほど一貫性を持って狙いを定められるパターは他になく、“わずかに狙いがズレているかもしれない”と思った時、かなりアライメントがズレて見えるため、選手たちは即座にそれに気付くことができるのです」と述べている。
意図したターゲットラインに対して直角に並んだ白黒のストライプ。マレット型のバーサ ジェイルバードの独特な形状と色合いは、確かにこのパターを際立たせているが、これは単に見た目だけの問題ではない。この設計には、パッティングのパフォーマンス向上を促進するため、2つの主要なテクノロジーが導入されている。
まずはジェイルバードがオデッセイの著名なモデルであるツノ型の「ナンバー7」に似ていながら、バックバーにより最後尾の2点が接合されているところ。これにより、重心位置をフェースからさらに遠ざけることを実現している。慣性モーメントが高くなり、オフセンターヒットに対する寛容性が向上。ストロークの安定性が高まるのである。
二つめはその色合いで、バーサは白黒の色調によるコントラストが、アドレス時とストローク中のフェースアングルを強調し、アライメントとストロークパスの両方をサポートしている。
しかし、バーサ ジェイルバードはPGAツアーで快調なスタートを切ったものの、振り返ってみれば、一世を風靡したとまではいえなかった。
その絶滅しかけたパターを、2021年、パッティングコーチのフィル・ケニオンに師事したブラッドリーがツアーに再び持ち込んだのである。
キャロウェイのツアーマネジャー、ジョー・トゥーロンはGolfWRX.comに「キーガンは2021年9月に初めて現在のパターのスタイルを試しました。少し長めのパター(グリップ末端まで約38.75インチ)ですが、彼はアレックス・ノレンやビリー・ホーシェルと同じような感じで使っています。彼は左手を下にして、右手の指は左前腕とグリップの間に置いています。恐らく、彼は当初、自分がメジャー(2011年全米プロ)で優勝した際に使用していたベリーパターのセイバートゥースと似た感覚を模索していたのだと思います。最終的に彼はバーサ ジェイルバードのヘッドに落ち着きましたが、対照的な白黒の配列が、彼により良いフェースアングルの意識を与えたのです」と述べた。
ブラッドリーはこのパターで今季序盤の「ZOZOチャンピオンシップ」を制覇。ただし、この勝利はオデッセイ バーサ ジェイルバードにとって名誉であることには違いないが、パター市場という観点から見ると、同モデルは絶滅状態のままだった。少なくとも、この後に起こることに比べれば。
ことし1月、「ザ・アメリカンエキスプレス」のわずか数日前のこと。ファウラーは彼のキャディであるリッキー・ロマノの持っていた、17インチのスーパーストロークツアー3.0グリップが装着され、ソールに20~25gの鉛テープが貼付されたオデッセイ バーサ ジェイルバードパターを試打した。ファウラーは瞬時にこのセットアップを気に入り、トゥーロンに完全なレプリカをリクエストした。
ファウラーは「ザ・アメリカンエキスプレス」にて、GolfWRX.comに「ここ数年、自分の望むような感じでパットができていなかった。自信という面から言っても、前まで常に感じていたフィーリングを感じられないという部分がその一因となっていた。右手が、自信を持ってストロークできていないんだ。ただ、必ずしも何かを模索していたわけではない。僕は辛抱しながら、自分の通常の練習に取り組んでいたんだ」と述べている。
「衝撃的だったよ。というのも、これまで一度も長めの物や、カウンターバランスのようなモデルは試したことがなかったから。ある意味、これは僕を自由にしてくれた。僕やストロークやスタンスを変えたわけではないし、自分の持っている通常の長さのパターを使う時と握り方を変えているわけでもないからね。とにかく、僕が考えなくても良いようにしてくれている感じがするんだ」
ファウラーはそれまで数年にわたり、ほぼ毎週のようにパターをテストしながら変更していたが、その週にくだんのパターを実戦投入すると、それ以降、このパターは彼のバッグに収まり続けている。以来、ファウラーは今年出場した大会で10度のトップ15フィニッシュをマークしている。
ファウラーがオデッセイ バーサ ジェイルバード パターと復活を遂げている期間中、ファウラーはフロリダのメダリストGCにて、クラークと共にラウンドをした。この時、クラークもまた、このパターに興味津々となった。
クラークは当時ついてこう話す。「僕らは彼の所属しているフロリダのメダリストで一緒にプレーしていたんだ。あれはベイヒル(アーノルド・パーマー招待)の前のことで、その頃、僕はパットの調子が良くなく、一緒にプレーしていたリッキーはほとんど全てのパットを入れていたんだ。ラウンド後、僕らは大会へ向けて少しだけ練習し、その時、僕は何球か試しに打たせてもらった。オデッセイの知り合いにテキストで、“ねえ、僕にリッキーのパターを作ってくれないかな?”って送ったんだ。そうしたら、彼は“じゃあ、スペックは?”と聞いてきたので、僕は“寸分たがわず同じ物で”と答えたよ」
この時点で、オデッセイ バーサ ジェイルバードは公式に絶滅の危惧を脱した。
それから間もなくして、クラークはPGAツアー最初の2勝を「ウェルズファーゴ選手権」と「全米オープン」で手にした。彼は今や、フェデックスカップ で4位、そして世界ランキングでは11位につけている。
クラークによる2023年「全米オープン」制覇のわずか数日後、GolfWRX.comは5人のPGAツアープレーヤーが、クラークと同じ、カウンターバランスのスーパーストロークが装着されたオデッセイ バーサ ジェイルバード パターを手に、同じ魔法が使えないかどうか試しているところを目撃した。その5人とは、クレイマー・ヒコック、ジミー・ウォーカー、ライアン・ムーア、カール・ヤン、そしてジョエル・ダーメンである。
クラークの優勝が「トラベラーズ」での彼によるパターの試打セッションにつながったかと問われたヒコックは、「成功は間違いなく、何かしらのヒントを残すもの。ウィンダムは仲良しの友人で、彼の勝利の後、僕はこれを戻さざるを得なくなった。これはストロークの間中、手の中で非常に安定しているんだ。ただ、それがグリップによるものなのか、ヘッドによるものなのかは分からないけど」と述べた。
「トラベラーズ選手権」での水曜に、GolfWRX.comはPGAツアーのパッティングインストラクターであるスティーブン・スウィーニーと、オデッセイ バーサ ジェイルバードがアマチュアゴルファーにとって、実際的にどのような効能をもたらすかについて話をした。
スウィーニーは言う。「人々があのパターについて理解していない最大のポイントは、バーサの要素である白黒の色合いではないかと思う。かなり初期の段階でアライメントの補助になる。そして、このパターのカウンターバランスである部分が、バーサの特性と一体となり、始動すると後は勝手にスイングしてくれるように機能する。いとも簡単に正しい軌道でスイングできる。インチキまがいの宣伝じゃないよ」
このジェイルバード狂想曲に呼応するかのように、サードパーティのパター市場では、この中古パターが1000ドル以上の金額で売れ始めている。ブラッドリーがこのパターで「トラベラーズ選手権」を制覇したのもとどめになった。
オデッセイは「トラベラーズ」終了後に公式に限定版オデッセイ ジェイルバード380パターのリリースを米国で発表した。ジェイルバードは確かに今、高く羽ばたいている。
(協力/ GolfWRX, PGATOUR.com)