R.ファウラーが凱旋帰国!メジャーチャンプも集結
2011年 マックグラッドリークラシック
期間:10/13〜10/16 場所:シーサイドコース(ジョージア州)
佐渡充高が簡単解説!初めてのPGAツアー【第十六回】
石川遼選手がメジャー大会で勝つには何が必要だと思いますか?
非常に難しい質問ですね(笑)。「メジャーで勝つには何が必要か」という質問に対して、恐らく全選手の答えは異なるものだと思います。私はかつて、同じ質問をアーノルド・パーマーにぶつけたことがあります。彼の答えは「分からない」でした。彼が初めてマスターズで優勝した直後に、ある選手たちと練習ラウンドをしていたのですが、調子は最悪、一緒に回った選手全員に惨敗でした。パーマーにとっても何があればメジャーに勝てるかなんて分からない、結局はそれが答えです。「分からない」んですよ、本当に。ある選手は、流れに乗っていい調子の時にぶつけるとか・・・時期的な流れと答える人もいれば、体調だと答える選手、精神的なものだと答える選手などさまざまです。でもそれらは全て当たり前のことで、どこか何一つ欠けてもメジャーには勝てないんですよ。例えば心の中に心配事があったらゴルフに集中出来ませんしね。こんな話もありました。デービス・ラブIIIの父である、デービス・ラブJr.は、マスターズの優勝争いをしていた時、最終日のスタート前に、「もうすぐ子供が産まれる」という連絡を受けました。アメリカの常識で考えれば、本当は帰って出産に立ち合うのが普通なのですが、優勝目前でそれが叶わなかったのです。しかしそれがメンタル面に大きく影響したんでしょうね。結局マスターズでの優勝も逃し、デービス・ラブIIIは子供の頃から、お父さんに「おまえのせいで、マスターズに勝てなかったんだ」と言われ続けてきたと言っていました(笑)。本当に何が必要かなんて分からない。勝った者が振り返ってみると、「こうだったな」って言えることであり、何か一つ欠けると、それは勝てない理由になってしまうということですね。未だにアーノルド・パーマーだってきっと答えは分かっていないと思います。もちろん当たり前のことなら言えます。精神力の強さ、技術、調子の持っていき方・・・そんなことは誰だって理解しているんです。でも勝つためにはその奥にあるものが、さらに必要なんだと思います。運も必要です。でも運を4日間良くする方法なんて言われても分かりません。そういうものなんだと思います・・・というのが、私が思っている答えですね。
グレッグ・ノーマンや、ゲーリー・プレーヤーは、勝つために必要なことは、「無」になることだと言っていました。トップに立つと、ものすごいプレッシャーで、パッティングの手さえ動かなくなりますから。そういう状況の中、どうするかというと無心になることしかないんですよね。この2人は“禅”の精神を学んだりしていました。究極の「無」ですね。その「無」とは何もないことを表していることから、ノーマンは、ボールの0番を使用していました。それくらいこだわっていたんです。結局全英オープンで2回勝っていますが、アメリカでは勝てませんでした。マスターズで惜しい試合もありましたが、ニック・ファルドに逆転負けを喫しました。各選手がこうしていこうと決めたことを実行して、実際に結果が出るかどうか、またその結果を天にまかせるようなところはあったと思います。これさえあれば絶対勝てるという自信をもって臨む選手はいないと思いますね。何かが欠けていれば勝てないことは明確です。かといって全部揃っても勝てるとは限らない。勝者はただ一人、そういうミステリアスな部分がメジャー大会の魅力でもありますね。
- 佐渡充高(さどみつたか)
- ゴルフジャーナリスト。1957年生まれ。上智大学卒。大学時代はゴルフ部に所属しキャプテンを務める。3、4年生の時に太平洋クラブマスターズで当時4年連続賞金王に輝いたトム・ワトソンのキャディーを務める。東京中日スポーツ新聞社を経て85年に渡米、ニューヨークを拠点に世界のゴルフを取材。米国ゴルフ記者協会会員、ゴルフマガジン「世界トップ100コース」選考委員会国際評議委員。元世界ゴルフ殿堂選考委員。91年からNHK米ゴルフツアー放送ゴルフ解説者。現在は日本を拠点に世界のゴルフを取材、講演などに飛び回る。