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2013年 WGC HSBCチャンピオンズ
期間:10/31〜11/03 場所:シェシャンインターナショナルGC(中国)

<佐渡充高の選手名鑑 98>ライアン・ムーア

■ 学生最強ゴルファー

ヒゲのライアン・ムーア(31)は、先週の今季第3戦「CIMBクラシック」で優勝を挙げ、序盤から好スタートを切った。ツアー9年目、この優勝で通算3勝目を数えるが、ネバダ大学時代は最強の学生ゴルファーで、タイガー・ウッズのライバル候補と大いに期待される選手だった。2004年にアマチュアゴルフの4大メジャー「全米アマ選手権」、「パブリンクス選手権」、「全米学生選手権」、「ウエスタン・アマ選手権」など、同一年度に優勝を重ねて学生ゴルフの記録を塗り替えた。これはジャック・ニクラスタイガー・ウッズもなし得なかった快挙だった。加えて同年は「世界アマチュア選手権」でも優勝。翌2005年の「マスターズ」では13位タイと健闘してローアマに輝くなど、記しきれないほどの実績を積み重ねた。地元シアトルのスーパーヒーローでマリナーズの始球式に登場、ゴルフ誌の表紙を次々に飾るなどアマチュア界のトップスターだった。プロ転向後は、推薦出場でPGAツアーに参戦し、賞金シードを獲得。ウッズと同じく、Qスクールを経験せずにメンバーになった数少ない逸材だ。

ルーキーイヤーで迎えた2006年3月、プレー中に左手首に激しい痛みが走った。検査結果は早期の手術が必要との診断。手術後7週間のリハビリを経て復帰したものの、完治を実感するに至らなかった。ムーアは試行錯誤の末、構えてからクラブヘッドを水平近くまで上げ、それからバックスイングに入る独特のスタイルに辿り着いたのだ。「このアングルでバックスウィングをとると痛みがないから」と、以前のスイングに戻るまでに歳月を要した。ツアー9年目で3勝にとどまった大きな理由は手首の負傷の影響もあった。

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■ ショットも信念も曲げない男

ムーアのゴルフは「曲げない」に尽きる。距離は出る方ではないが、ショットの正確性は群を抜く。2013年シーズンも40連続フェアウェイキープを記録し1位。6月のメモリアル・トーナメントでは、驚異の96.43%の数字を弾き出した。今年9月プレーオフシリーズ3戦目「BMW選手権」でも75%でフィールド1位。曲げないというと慎重派のイメージを抱くが、彼はクレバーな知略家、攻略家だ。野球に例えると、9回2アウト1打逆転サヨナラの場面で、自分の策を試すために進んで打席に立ちたがるような一面もある。

「曲げない」のは信念も同じ。特にクラブへのこだわりも筋金入り。「納得できるまでは無理」とクラブメーカーとの専属契約を、長い間、結ばなかった。マスターズ出場の際に最適のパターを求めていたところ、偶然出会った市販のたった25ドルのパターに閃き、実戦で使用したこともあった。ウエアや靴もクラブと同様に、良いプレーに欠かせない勝負アイテムだと考え、こちらも長い間、契約を結ばなかった。ウエアのデザインのみならず、シャツに入る企業のロゴにもこだわるほどファッション・コンシャスで、ベン・ホーガンやサム・スニード全盛時代のクラシカルでモダンなスタイルを愛し、カーディガンにネクタイを締めプレーしたこともあった。

■ オール・イン・ザ・ファミリー

ムーアはワシントン州シアトル近くのタコマで生れる。野球少年からゴルフに転向すると、メキメキとその頭角を現し、家族はムーアを全力でサポートした。プロ転向後、自分好みのゴルフ場、練習場が欲しいと地元のパブリックコースを購入した両親。息子の熱い希望で、父親はディベロッパーとして基礎作りに奔走した。父は2011年の「全米シニアオープン」に挑戦するなど意欲的なアマチュアで、設計のノウハウやコース知識も備えていた。5回の改修を繰り返し、ようやく完成したゴルフ場には“ザ・クラシックGC”と命名。オフにはそこで思う存分、練習ができるようになった。

ムーアのキャディを務めるのは、弟ジェイソンと弟の親友JDの2人。「フレッシュな気持ちを維持するため」で、2人を2、3週ごとに交代で起用している。専属キャディというパートナーシップには興味がないようで、ビジネス面は父と、兄のジェレミーが担当している。

ムーアは2年前に同じ大学のニッキー・オルソンと結婚。彼女は学生時代にサッカーのディフェンダーとして活躍したスポーツウーマンだ。可愛くて朗らかな女性で、パートナー選びは、彼のこだわりの真骨頂とも言えるだろう。昨秋には長男タッカーが誕生し、現在は充実の毎日を送っている。新シーズン序盤でツアー3勝目を飾ったムーア。いよいよ念願の世界選手権、そしてメジャー優勝へフォーカスを当てていく。

佐渡充高(さどみつたか)
ゴルフジャーナリスト。1957年生まれ。上智大学卒。大学時代はゴルフ部に所属しキャプテンを務める。3、4年生の時に太平洋クラブマスターズで当時4年連続賞金王に輝いたトム・ワトソンのキャディーを務める。東京中日スポーツ新聞社を経て85年に渡米、ニューヨークを拠点に世界のゴルフを取材。米国ゴルフ記者協会会員、ゴルフマガジン「世界トップ100コース」選考委員会国際評議委員。元世界ゴルフ殿堂選考委員。91年からNHK米ゴルフツアー放送ゴルフ解説者。現在は日本を拠点に世界のゴルフを取材、講演などに飛び回る。

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