昨季最終戦からわずか3週 米ツアーの2016-17年シーズンが開幕
2016年 セーフウェイオープン
期間:10/13〜10/16 場所:シルバラードCC(ノース)(カリフォルニア州)
<選手名鑑215>ウェズリー・ブライアン(前編)
■ トリックショットの人気パフォーマーがPGAツアーへ
ウェブドットコムツアーの賞金王、出場優先順位1位で今季PGAツアーのシード権を獲得したのはウェズリー・ブライアン(26)だ。参加3試合目のルイジアナオープンでツアー初優勝。翌4月のメキシコ選手権で2勝目、8月にはアリーオープンで3勝目を挙げ。出場した13試合で3勝と、怒涛の勢いで頂点を極めた。
年間3勝の選手は、米陸軍で優れた兵士を昇格させた制度に由来する「バトルフィールド・プロモーション」と呼ばれるステータスを得る。それは3勝目翌週からの「PGAツアー昇格」と「翌年のシード権」の獲得を意味する。ウェブドットコムツアーでは、97年のクリス・スミスが初めて達成し、ブライアンで11人目となった。
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賞金王に輝いた昨季のウェブドットコムツアーでは、平均パット1位、バーディ率2位、平均ストローク3位(68.88)と、小技の上手さが際立っていた。それもそのはず、ブライアンはトリックショットの名人なのだ。youtubeで公開したホームメードビデオは大反響で、トリックゴルフ界のスターとして、トッププロをも虜(とりこ)にした。ビッグドローやフェードで狙うバッバ・ワトソンも、彼の凄技に夢中。ロリー・マキロイは自ら志願し、トリックショットのパフォーマンスに参加して映像に登場したほどだ。
■ It’s Show Time!
2014年のある日、テレビ番組で紹介されたトリックショットを、2歳上の兄と見ていたブライアンは「あんなの即できる!」と翌朝さっそくやってみた。兄弟はサウスカロライナ大学(州立)のゴルフ部でMVPに輝くなど活躍し、腕には自信があった。やればやるほど面白く、トリックショットに夢中になって、次々と新しい離れ業(わざ)に挑戦。バリエーションもどんどん増え、youtubeにアップするやいなや、すぐさま人気に火が点いた。それらを集めた「Bryan Brothers Golf」(通称“BB ゴルフ”)という彼らのホームページはアクセスが殺到!僕も大ファンの一人だ。その収益を活用し、目標のツアープロへと前進、ミニツアーやウェブドットコムツアーでのプレーをスタートしたのだった。
■ 家族ぐるみで仰天トリック
まるでテレビゲーム!?と思えるほどの仰天トリックショットの一部を紹介しよう。
<1>丘の上にある家の庭に紙コップをティーペグ代わりにバスケットボールをセット。アイアンでそのボールを打って眼下に設置したリングネットに直接入れる離れ技
<2>スコットランドでは特有のポットバンカーからバンカーショットで出した打球を、落下直前に1Wでナイスショット!
<3>ワールドカップバージョンと題した動画では、サッカーフィールドの左右のコーナーアークから、ハンドボールを8Iでフック、スライスをかけゴール!
<4>今年6月のPGAツアー「セントジュードクラシック」出場の際は、兄が3面に立てた瓦にウェッジでボールを当てる。するとキン、コン、カンと3つの瓦を跳ね、目前に上がったボールを弟ウェズリーが1Wでヒットしてナイスショット!ギャラリーは拍手喝采だった
ファミリー・バージョンは、最初に父がアイアンでリフティングしたボールを母につなぎ、母から姉へ、姉から兄へとリフティングでつなぎ、兄はそこからボールを上げ、そのボールをウェズリーが1Wでフェアウェイにショット!と一家の見事な連携プレーを披露した。ブライアン家の凄技とチームワーク、創造力には脱帽だ。
PGAツアーにはフィル・ミケルソンやワトソンらトリックショット名人がいるが、ブライアンはアーティスト級。実戦でどこまで生かせるかは未知数だが、思わず「ショータイム」も期待してしまう。
- 佐渡充高(さどみつたか)
- ゴルフジャーナリスト。1957年生まれ。上智大学卒。大学時代はゴルフ部に所属しキャプテンを務める。3、4年生の時に太平洋クラブマスターズで当時4年連続賞金王に輝いたトム・ワトソンのキャディーを務める。東京中日スポーツ新聞社を経て85年に渡米、ニューヨークを拠点に世界のゴルフを取材。米国ゴルフ記者協会会員、ゴルフマガジン「世界トップ100コース」選考委員会国際評議委員。元世界ゴルフ殿堂選考委員。91年からNHK米ゴルフツアー放送ゴルフ解説者。現在は日本を拠点に世界のゴルフを取材、講演などに飛び回る。