M.クーチャーが逆転でツアー通算4勝目 T.ウッズは40位T
2012年 ザ・プレーヤーズ選手権
期間:05/10〜05/13 場所:TPCソーグラス(フロリダ州)
【WORLD】M.クーチャーが得た自信/ザ・プレーヤーズ選手権レビュー
Golf World(2012年5月21日号) texted by Ron Sirak
TPCソーグラス・スタジアムコースでの日曜日。「ザ・プレーヤーズ選手権」最終日、NBC/ゴルフチャンネルのコメンテーター、ジョニー・ミラーは正面を切って核心をつく言葉を残した。マーティン・レアードが18番ホールで8番アイアンでのショットをグリーン左に外し、まだ4ホールを残して首位に立っていたマット・クーチャーにプレッシャーをかけるチャンスを無駄にした後のことだ。歯に衣着せぬ物言いで知られるミラーは、こう言った。「ゴルフには、プリテンダー(見掛け倒しの人)がいるし、コンテンダー(戦える人)もいる。だが、クローザー(最後にしっかり締めくくれる人)は少ない」。これ以上、的を射た表現はないのではないだろうか。
日曜日の展開は、実に興味を注がれる最終ラウンドとなった。PGAツアーは、“ポスト・タイガー・ウッズ”を求め続けて3年目。そのウッズは40位タイで終えた。彼が3大会連続で40位以下の成績だったはプロ生活で初めてなことだけに、もしこれが新たな現実だとしたら、かなり興味深いことだ。
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1996年(ウッズがプロ転向し、フィル・ミケルソンが4勝した年)から2009年まで、ツアーのシーズン最多勝利者は最も少ない年で4勝、最多では2000年のウッズと2004年のビジェイ・シンが9勝を挙げている。だが、スキャンダル後のウッズが崩壊して以来、2010年はジム・フューリックがわずか3勝でシーズン最多勝利者となったほか、昨年は実に7人がたった2勝で並んだ。
日曜日、クーチャーは、最終ラウンドを「70」でまとめ、275の通算13アンダーで、レアード、リッキー・ファウラー、ザック・ジョンソン、ベン・カーティスに2打差をつけて勝った。今年開催されたPGAツアー21大会で20人目の優勝者だ。この20人の中で唯一、2勝しているのはハンター・メイハンだけだ。常に笑顔を浮かべ、安定したコンテンダーである33歳クーチャーは、キャリア4度目、直近3年間で3度目の勝利を手にし、ようやく安定感のあるクローザーになろうとしているのかもしれない。
6年前にこの「ザ・プレーヤーズ選手権」の開催時期が3月から5月に移って以来、54ホールを終えた時点でトップに立った選手には、呪いが降りかかっている。今年、その呪いに悩まされたケビン・ナは、最終ラウンドで「76」と崩れた。2007年以降、首位で最終日を迎えた男たちのスコアは「76」、「74」、「79」、「74」、「79」という散々なもの。ナは彼らの仲間入りをしてしまった。
けれど彼は、プリテンダーからコンテンダーになった。正直なところ、見るのが辛いほどスイングが不調だったことを考えれば、ナが記録したスコアは目を見張るものだった。才能はそこにある。今、彼に必要なものは、それに続くメンタル面での成長だ。
そしてファウラー。彼は「クーチャーのように、自分はメジャー大会で戦えるプレーヤーだ」と考えながら、大会を去ったはずだ。これまで、ファウラーに対する非難は、彼はゴルフ界のアンナ・クルニコワ(ロシアの女子テニス選手)だというものだった。つまり、容姿は端麗だが、仕事はできないという痛烈なもの。しかし彼はこのプレーヤーズで2位タイを堅守し、「ウェルズファーゴ選手権」でのPGA初勝利が、マグレではなかったことを印象付けた。今後の突破口となるであろう初優勝をマークした直後に、努力の証を見せつけたのだから、誰もファウラーを悪く思う人はいない。
「チューリッヒ・クラシック」前の火曜日に、左手を下にしたクロスハンドのパッティング・グリップに変えて以来、ファウラーは12ラウンド連続で、イーブンパー以下で回り、平均スコアは「68.8」で、全体10位タイ。優勝、2位タイという成績を連続で残した。若年層のファンを数多く持つアイドルが突如、カラフルなコスチュームに見合うだけの試合ができるようになった。彼こそが、北アイルランドのロリー・マキロイに対する、アメリカの答えなのかもしれない。ちなみに、23歳のマキロイは世界No.1(同大会直前の世界ランキング)だが、プレーヤーズでは出場3大会連続で予選落ちした。