タイガー・ウッズ 復活の軌跡
【WORLD】最終日首位スタートは優勝できない?
Golf World(2012年5月14日号) texted by David Barrett
タイトルの答えは、今年のPGAツアーを終えた後に出るのかもしれない。しかし今シーズンは、既にいくつかの試合で、54ホール目を終えて2位に5、6打差をつけて首位(タイ含む)に立ったプレーヤーが、最終日に優勝を逃している。「ウェルズファーゴ選手権」までの19大会中、最終日を首位、もしくは首位タイでスタートした選手で優勝したのは僅かに8名のみ。さらに、3日目を終えて首位の22人中10人という、およそ50%の選手が最終日にオーバーパーを叩いているのだ。
PGAツアーとgolfstats.comのデータを参考にしてみると、これらはなにも今年に限った現象ではないことがわかる。54ホール目を終えた時点で、首位に立った選手が最終日に逆転される確率は、2007年から2012年までで45%にも上っている。そして最終日のアベレージスコアを見ると、首位からスタートした選手がどれだけ苦しんだかが理解できる。
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以下に驚くべき数字を記していこう。2007年以降、3日目を終えて首位タイに浮上した選手(タイガー・ウッズを除く)は、最終日に平均71.35ストロークを記録。この数字は最終日の平均スコア71.19を下回っている。3日目まではすこぶる順調で、あと1ラウンド無難に対応できれば優勝できるはずなのだが、タイトルというプレッシャーのかかった選手達はツアーの平均スコアにすら到達出来ていない例が多い。
原因としては、2つの理由が考えられている。1つは、3日目まで維持してきた調子を、信じ難いことに最終日に落としてしまう。それどころか、それまでの好調なリズムを生かせていない。ここ18カ月のデータによれば、最終日をトップ20位以内で迎えた選手は、最終日に限り、3日目を終えた時点でトップ20位以下の選手よりも成績を落としている(平均ストロークでは71.06から71.33となる)。トップ20位以内の選手の力量は、3日目までの成績だけではなく、キャリアを通してみても、それ以下の順位の選手よりレベルが高いことは証明済みとなっているにも関わらずだ。
それゆえ、3日目まで好調を維持していたからといって、首位で迎えた選手が最終日に60台のスコアを記録するとは言い切れない。しかしながら、トップで4日目を迎えた選手(ウッズを除く)を集団で見てみると、トップ20位以内に入った選手達よりも多く叩き、フィールドのアベレージ、そして更に言えば自身のキャリアアベレージを上回るストローク数を記録してしまっている。いったいなぜか?ランダムなデータを排除するに十分なサンプルを見たところ、突如不振に陥る原因は、やはり“プレッシャー”であると考えられている。
もちろん、これまでのすべてがそうだったとは限らない。2003年から2006年までの統計を見ると、3日目を終えた時点で首位に立っていた選手の65.4%(182人中119人)が優勝しているからだ。しかし、それが2007年から2012年になると、44.7%(244人中109人)へと大幅に減少してしまっている。過去5年間で最も活躍した代表的なプロと言えば、ウッズ、フィル・ミケルソン、そしてビジェイ・シンだが、後者2名は一時代を築いた当時と比べ、終盤にスコアを落としてしまっている。つまり相対的に、多くの新しい選手たちが3日目を終えた時点で首位に立っていることになり、それは彼らにとっては初めての体験とも言え、日曜日に計り知れないほどのプレッシャーの影響を受けていると言える。
「僕はまだ24歳だし、今経験していることの多くは初めてのことばかり」と語るのはカイル・スタンリー。スタンリーは、今年1月にトーレ・パインズGCで開催された「ファーマーズ・インシュランスオープン」で、最終日を2位に5打差の単独首位でスタートしたが、プレーオフで敗退。しかし翌週の「ウェストマネジメント・フェニックスオープン」では大逆転優勝を果たした。「今話しているようなシチュエーションに身を置く機会が増えれば、それだけ自信を持ってプレーできるし、プレッシャーにも対応出来るようになる」。
スティーブ・ストリッカーもスタンリーの意見に賛同した。経験に代わる強みは「無い」と断言している。「まだ慣れないうちは、自分の内側にいる自分が語りかけてくる言葉も違うし、その状況で何を考えているのかも変わってくる。(経験が増えると)すべてが変わったと感じるんだ」と語る45歳のベテランは、最終日を首位で迎えた直近7大会中6大会で優勝しているが、同条件下の、キャリアで最初の8大会ではわずかに2勝しか挙げられていなかった。