幸運あり?石川遼はT.ワトソンと予選ラウンド同組に
2012年 全英オープン
期間:07/19〜07/22 場所:ロイヤルリザム(イングランド)
【WORLD】同情なんかいらない/L.ウェストウッド ストーリー
Golf World(2012年7月16日号) texted by John Huggan
「いいことが起こるまで、みんなただゴルフを楽しんでプレーすればいいんだ」と指摘するのは、スポーツ心理学者のボブ・ロテラ氏だ。「この点に関して、リーは驚くべき仕事を成していると思う。何があっても平静を崩さない。自分ができることは、できる限りいいプレーをすることであることを知っているし、それができたら幸せでいられる。素晴らしいことだ。自分で自分を打ちのめさないし、引き裂きもしない」。
「リーは本当に練習熱心なんだ」と話すのは、ジェフ・オギルビー。「どうやって試合に臨むか、コース上ではどう考えるべきか、その点に関してはツアー内でも屈指のスマートさを誇る。ウィットに富んでいるし、頭がいいんだ。そして、ジョークが大好き。一緒にいて楽しい男だ」。
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事実、ウェストウッドは真顔で人を“からかう”達人でもある。数年前のバハマ諸島で、その日、ウェストウッドの夫人と飲んでいたあるジャーナリストに近寄った。「どうもありがとう」と、ウェストウッドは厳しい視線を投げかけながら言った。「妻はベッドで寝ているよ。君がノックアウトしたんだ。俺は誰と一緒にディナーを食べればいい?」。当惑した記者がしきりに謝るのを聞いていたウェストウッドだが、その顔と目はまだひどく怒っているように見えた。不運な記者は謝りつづけ、その場にひれ伏しそうになった。結局、ウェストウッドは笑いをこらえることができなくなってしまった。大笑いをすると、ようやく記者を解放して言った。「さあ、飲みに行くぞ!」。そして、二人は飲みに出掛けた。
この愛される性格は、「上がって、下がって、また上がる」というキャリアを送っているウェストウッドにとっては、必要なものだ。彼は2002年から2004年に大スランプを経験した時には、世界で7度優勝を飾った2000年に4位だった世界ランクが264位まで落ちてしまった。「1度だけ、リーがすべてをしまい込んでしまおうとしたことがあるのを知っている」と父は言う。「ゴルフを楽しめていない、辞めるかもしれないと言ったのは、1度じゃなかった」。
だが、彼は辞めなかった。そして今、ウェストウッドはストレスを感じた時の刺激として、このトラウマのような時期を思い出すことにしている。「スランプが、いろいろな意味で助けてくれる。そうでない時もあるけどね。自分の弱点を把握することができる。決していいことじゃないけど。だが、自分のやっていることに関して、より心地よくいられる。僕はどんなことにも対処できる術を持っていると知っている。また舞い戻って直面したくはないが、そうしなければならない時には、どう向き合うべきかわかっているつもりだ」。
この態度こそが、仕事に対する倫理と、ゴルフに対する研究熱心なアプローチを持つ一面でもある。スイングコーチのピート・コーエンの助けも借りて、ウェストウッドは彼の持つパワーを利用することで、技術的な問題を解決した。その1つが、エレガントさには欠けるが、自然な筋肉を使ったパワーフェードで、それがドライバーの武器になっている。
「インパクトの時に、リーの左腕が曲がっていることについて、みんなコメントしている」とコーエンは言う。「だが、あの腕は自然の状態でも17度曲がっているんだ。だから、彼ができることはない。あの曲がりがあるからこそ、コースの左側を考えずに済む訳だ。彼は好きなだけ強くボールを叩くことができるんだよ」。
「バックスイングのトップの右腕と手の位置は、まだ練習を続けているところだ」とコーエン。「それが正しく修正されれば、ほぼ完璧にボールを叩くことができる。彼のメカニックは非常に純粋だから、ほぼ毎回ボールをまっすぐ飛ばすことができるんだ。右腕の位置が改善されるにつれ、体のポジションが安定して、ボールにより多くの圧力を掛けることができる。これはエネルギーを効果的に移行することができている証拠だ。これは全部科学なんだ」。