海外メジャー最終章! 日本勢は石川、藤田、谷口が出場
2012年 全米プロゴルフ選手権
期間:08/09〜08/12 場所:キアワアイランドリゾート(サウスカロライナ州)
【WORLD】メジャー最終戦の舞台 キアワアイランド
Golf World(2012年8月6日号) texted by Mike Stachura
アリスは夫と同コース建設に携わった2年間での生活を思い起こし、1日18時間をスタッフと共に働いたこと、時には夜にライトを設置して砂を移動させたこともあった。夫は、プレーヤーに感じてもらいたいことを表現することにかけては、誰よりも優れていたという。「コースは単体のユニットが集まっているんです。風、角度、景観の全てが違います。夫はこうした角度をつけることにかけては天才的で、実際の難易度よりもプレーヤーは難しく感じるでしょうね」。
ダイはプレーヤーに対し「自分にこのショットが打てるだろうか?」と思わせる設計を施している。これを顕著に表したのがパー5の2番。プレーヤーは湿地帯をどうやって避けるか、2通りの方向しか考えられないティで頭を悩ませる。ダイ自身もこのコースについては、「全ホール中もっともむちゃくちゃなホール」と語るくらい難易度が高い。仮にどうにかして2打でグリーンに乗せられれば良いものの、もし勇敢さを失えばグリーン周りにあるバンカーに捕まってしまう。その他では12番ホールも特徴的で、フェアウェイの幅は30ヤードありながらも、グリーン右脇には池があり、かなり高いアプローチの精度がなければ最終的には痛い結果が待っている。仮にここで、300ヤードの新たなティを設置すれば、相当に興味深いコースとなるに違いない。
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最も単純なホールながらも、パー3の17番は、1991年のライダーカップでプレーヤーを苦しめた難所だ。ダイはゴルファーであれば当然1打でグリーンに乗せたい衝動に駆られることを知っている。幸か不幸か、ハリケーン・ヒューゴが建設中のコースを吹き飛ばしてくれたことで、マンモス級の池に囲まれたグリーンを作ることができた。ところで、グリーンの大きさはティボックス程度にしか見えないだろうが、実は930㎡もある。そして同様にして各ホールでダイの特徴が垣間見え、6番では正確無比なドローボールが要求され、7番では逆にフェードが求められる。
フライはダイについて「イリュージョンマスター」と称しているが、それは二つの要素から成っているという。「ピートはゴルファーとしても優れていたので、プレーについても精通していました。それに非常にクリエイティブです。つまりプレーについて熟知し、クリエイティブな創造性を持っているから、それら二つを合わせれば面白いレシピが完成するというわけですよ」。
そのダイが特に完成度に誇りを持っているのはパー5の11番(593ヤード)で、プレーヤーに考えさせ、ショットを躊躇するよう仕向けたデザインになっている。「選手がグリーンを狙えるようできる限りのことはした。おそらく、あるがままに打つ選手の方が、考え過ぎる選手よりも良い結果が出ると思う。もちろん皆グリーンを狙えるか考えるだろうけれど、私にとってのチャレンジは、選手の頭をかき乱すことだから」。
ここ何年かで微調整を続けた結果、リゾートを訪れるゲスト、そしてエリート選手にとってもコースは少しばかり扱いやすくなり、フィジカルに加えてメンタル面の試練が維持されるよう手を加えた。このコースはライダーカップが開催された当時の状態とは変わったが、変更点の一つとして、ラフが増えたことが挙げられる。何よりも変化が加わったのは2002~03年で、18番を40ヤードも海岸寄りに移動させた。そしてグリーンの芝も海水に強いイネ科に変更された。
そもそもプラン自体があったわけではなかった。ダイは青写真が無いところから仕事ができることで名声を得ていた人物で、オーシャンコース作成の経過も、空き地でフットボールをやるような感じで進み、決してNFLのルールブックのように細かく決まったプランは無かった。砂丘、荒れ果てた土地、バンカーが大半を覆い、そのどれもがPGAツアーで見られるようなバンカーではなく、難易度も高い。ダイはハリケーンの後に砂丘を作り、その場その場で思い浮かんだアイデアをもとにコース作りに励んだ。フライも、「工事の序盤に大幅に変更したのは、土地の環境、工程くらいなものでした。ピートが砂をいじり、彼が納得する形になるまで待つだけ。計画の全ては彼の頭の中にありましたから」と当時について振り返っている。