【WORLD】ライダーカップ史上最も名高いショットは、実際には打たれたものではない
2012年 ライダーカップ
期間:09/28〜09/30 場所:メディナカントリークラブ(イリノイ州)
【WORLD】欧州選抜の強さの秘密とは/ライダーカップ
Golf World(2012年9月17日号) texted by Cart Sumpson
この「ボルボワールドマッチプレー選手権」は、まず8組(3選手ずつ)それぞれの総当たり戦で行われた。大会にはメジャー大会優勝経験者のグレーム・マクドウェル、レティーフ・グーセン、マーティン・カイマー、チャール・シュワルツェルの他、メジャー制覇していない平塚哲二、リチャード・フィンチ、そしてブラント・スネデカーの姿もあった。
私はスネデカーの細長い赤毛に密着し、ショートゲーム練習場に同行すると、可愛らしいファティアという女性が私についてきた(いつもこういう文章を書きたいものだが)。しかし大会スタッフに監視されるのは、むしずが走るものだ。その時にわかったことだが、ジャーナリストはパッティンググリーン、練習場、ロッカー、クラブハウス、プロショップ、それにホテル付近に近寄ることすら許されていなかった。一方でレポーターにば、アメリカの大会と同様に、多くの自由が与えられているのに。
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ごく当たり前な質問にスネデカーは「試合のペースも好きだし、マッチプレーは大好きだから」と答えると、パターや環境の違いについても哲学的な観点で分析し、「グリーンはこちらの方が遅いかな。風も強いし、アメリカのツアーよりも環境に変化があると思うね。だからこそヨーロッパの選手は上位に残る方法、ロースコアを記録する方法を熟知しているんじゃないかな。他に違いがあるとすれば、彼らは移動も一緒に行動すること。アメリカのプロが孤独とは言わないけれど、単独行動を好む傾向はあるから」と返答してくれた。
他23名の出場者と同様に、スネデカーはリゾートホテルに滞在。イングランドのジャスティン・ローズにも話を聞くと、「通常30人が同じバスでコースとホテルを行き来する。1人に1台というように優遇されることはないよ。中国でそんな待遇を受けたいと思うかい?僕は御免だよ」と答えてくれた。
その日の夜、ボルボがメディア用のパーティーを催し、私も参加した(クライスラーやトヨタからは何のお誘いも無かったが)。パーティーの準備中、私はベルギー人フォトグラファーのフィリッペ・ゴーディーと歓談。彼はたくましく髭を蓄えた容姿で、水音すら立たず光に反射したプールのそばにある主賓席の近くに立っていた。私はウエイターにテキサス訛りのスペイン語で「地元の赤」と注文すると、大きな容器に入った2007年もののマルケス・デ・バルガスを持ってきてくれ、フィリッペと私はグラスを交わした。たそがれ時のパーティーで、にこやかに過ごせた瞬間だった。
同じテーブルに座った7名と初対面の挨拶を交わすと、愛想の良さそうなビンセント・ボレマンズが、自然と私がスペインまでやってきた目的を訪ねてくれたので説明した。すると欧州ツアーのスター選手であるニコラス・コルサーツの代理人である彼は、バッバ・ワトソン批判を開始。彼はミスター・ワトソンが去年のフレンチオープンで見せた態度を非難した。欧州のメディアは、このアメリカ人がビデオ撮影、携帯電話使用の禁止を無視したギャラリーを批判したことを大きく取り上げた。またルーブルや他のパリを代表する建造物の名前を知らなかったことを挙げ、甘やかされた環境で育った世間外れという、アメリカのプロ選手のステレオタイプと罵ったのだ。
ボレマンズは、「ブーブ(バッバ)はセキュリティーレベルに不満があったようだが、ハンバーガーが無かったからではないのかな。食事はアメリカやイングランドのものほど酷くはないだろうけれど、アメリカツアーでは何もかもが全て同じ条件だからね。専用車がついて、同じビュッフェスタイルの食事。あちらのゴルフは、こちらよりもショー的発想が色濃い。コースにビールを提供するバーがあるわけだし、それは騒々しいはずさ。ニコラスも昔はそれが嫌だったらしいよ」とすると、ようやく聞きたかった答えが出てきた。
「欧州ツアーの長所は、選手とコースの連携で成り立っている。来週のツアーはこちらとは全く環境の異なるウェントワース(ロンドン近郊)、それからウェールズ、スウェーデン、全米オープン、ドイツ、フランスと続く。選手達は環境に対応することが求められるわけで、それが1番の違いかもしれない」。