欧州3強が揃い踏み ライダーカップの英雄らも集結
2012年 ライダーカップ
期間:09/28〜09/30 場所:メディナカントリークラブ(イリノイ州)
【WORLD】セベのために― 欧州選抜が歴史的大逆転勝利/ライダーカップレビュー
Golf World(2012年10月8日号) texted by Jim Moriaty
疲れ果て、陰気な雰囲気も感じられた2012年「ライダーカップ」米国チームは、ホセ・マリア・オラサバル率いる欧州選抜に14.5対13.5で敗れた。それでも、今大会は史上最も息をのむ激戦となり、試合後には双方、ハグ、ハイタッチを交わし、健闘を称え合った。足りないものがあるとすれば、真ちゅう製の記念額だけだった。
13年前、オラサバル自身も出場したライダーカップでは、ファッションセンスの欠片もないアメリカ人達が、人目もはばからず、ザ・カントリークラブの17番で史上最大の逆転勝利を飛び上がって喜んだ。亡くなったオラサバルの友人であるセベ・バレステロスは、欧州選抜をボストンでのティパーティーに招き、大量のシャンパンをシカゴ北西部で大いに振る舞った。1999年にアメリカ選抜が勝利した時と同じく、今年は欧州選抜が10対6と劣勢に立たされてから逆転勝利。アメリカの地で、バレステロスを偲び、ネイビーのパンツとベスト、そして袖に彼のシルエットを刺繍したウェアを着込み、大逆転勝利を飾ったのだ。両チームにとって、こうした結果になり得ることは予測が出来ていたのかもしれない。しかし、ある1人の想いを超えるだけの気持ちを持って試合に臨んだ者はいなかった。
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13年前、当時米国選抜キャプテンだったベン・クレンショーは指を振りながら「運命の力を信じる」と語った。オーリーも運命、そしてイアン・ポールターの力を信じていた。大会2日目の土曜日の朝、フォアサムマッチの前、はっきりとした秋空に「Do It For Seve―Go Europe(セベの為に、欧州選抜よ)」という空文字が描かれた。アメリカ選抜からすれば、それは13人目の選手となったと思っただろうが、欧州勢は違う場所から空を眺めていた。同日の午後に行われたフォアボールの時点でアメリカが10対4とリードし、欧州組にとってはこれ以上ないほど最悪の事態を迎えていたが、シカゴ在住のルーク・ドナルドがタイガー・ウッズとのラリーを制し1アップとし、ロリー・マキロイが驚嘆のパフォーマンスを披露すれば、ポールターも夕暮れ時に5連続バーディで締め、拳を突き合わせた。気合の入った表情は、まるで映画クージョの中に出て来る毛が綺麗にセットされたシーズー犬を彷彿とさせたが、その瞬間から欧州選抜が試合を支配し始めた。
金曜日の時点で米国の5-3となった際、オラサバルはチームルームで選手を一喝。だがそうした行為は、翌日ポールターの神がかり的な活躍後は必要なかった。最終日18番ホールのグリーン上で勝利インタビューを受けたオラサバルは、「昨夜、皆には『もし2試合で負けたら逆転は不可能』と言った。でもポールターの大活躍でトロフィーが我々の手に戻ってきた」と、シングルマッチによって得られる12ポイント中、8.5を獲得したチームを称賛。「昨日の夜、チームに伝えたことは、自分達にはまだチャンスがあるということ。それと、自分達の力を強く信じることが何よりも重要ということ」。
しかし、過去30年以上で最大のポイント差を跳ね除けることは、もちろん至難の業だった。そしてアメリカのホームという条件の下、新しく世界一に君臨したプレーヤーがあるアクシデントで試合会場に現れていなかったらと考えると、冷や冷やものだったに違いない。ライダーカップの歴史上初めての出来事と言えば、警察が欧州選抜を後方支援したことだ。マキロイはアメリカ東部時間と中部時間を勘違いし、ティオフの時間に間に合わない事態に直面していたのだ。州警察のパトカーに連れられ、まるで警官をお抱え運転手のようにして助手席に座ったマキロイが到着したのは11時14分のこと(ティタイムは11時25分)。
「後部座席に座っていなかっただけでも良かったんじゃないかな。運転してくれた警察官には『乗り物酔いしたことはありますか?』と聞かれたけれど、僕は『酔ったって構わない!時間までにティに連れていってください!』と頼んだんだ。もし遅刻して、他の11人、それに副キャプテン、キャプテンに迷惑をかけたら、それこそ一生自分を許せなくなってしまうからね」。