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【WORLD】「パーオン率」の真実
Golf World(2013年5月6日号)texted by David Barrett
マスターズ覇者となったアダム・スコットは、ショットメーカーとして定評があるが、昨季のPGAツアーのパーオン率は50位だった。では、私たちはいったい、記録や数字の何を信じれば良いのだろう?
スコットの一見したところ“大したことのない”パーオン率の数値は、シンプルだが特徴ある事実で説明がつく。スコットは2012年にツアーでタフなスケジュールの中でプレー。メジャーやWGC、フェデックスカップのプレーオフを中心に16試合に出場し、バーディが量産できるトーナメントではプレーしなかった。スコットがプレーした全ラウンドにおける全選手の平均スコアは72.11だったのだ。
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つまり、スコットが参戦したトーナメントは、パーオンするのがタフだったということ。確かに、スコットがプレーしたラウンドの平均パーオン率は60.24%で、これを考慮すれば平均よりも6.33%良いスコットの66.57%というパーオン率は、大変良い数値と言える。ツアー全体の平均パーオン率63.98%を基本とすると、アジャストしたパーオン率とは、選手をフィールドの他選手たちとより正確に比較する上で、(プレーした)コースがそれぞれ違うため、それを考慮したものとして規定されたものとなる。例えばスコットの場合、調整したパーオン率は、63.98%に6.33%を足して、70.31%となりツアーで8位にランクされるのだ。
対照的な面では、毎年、数名の選手がパーオン率ではトップ10にいるのに、賞金ランクで順位を落としている。こういった選手はパターが決められていなかったに違いないと言えそう。確かにそれも正しいだろうが、それ以上に、そのような高いパーオン率となるのは、簡単なコースでプレーしていたからなのだ。トッププレーヤーが、メジャー競技など硬いグリーンや深いラフがあるタフなセットアップのコースに対応している一方で、メジャーに出場できない選手たちは、パーオン率をアップさせているわけだ。
例えば2012年に賞金ランク143位、パーオン率で6位となったルーキーのラッセル・ノックス。彼がプレーしたラウンドでの平均スコアは70.62で、これはツアーでも5番目に簡単なスケジュールでプレーしていたということになる。ノックスは、メジャーとWGC、そしてプレーオフに一試合も出場していなかった。これではノックスとスコットは違うツアーでプレーしていたようなもの。まるでノックスが、難易度の低いコースで開催される大会が目立つツアーにいた感じだ。
ノックスがプレーしたラウンドにおける選手全体の平均パーオン率は67.47%。ノックスのそれは69.36%だから、平均よりも1.89%しか良くない。勿論、これはなかなかのパーオン率ではあるが、アジャストしたパーオン率は、63.98+1.89で65.87%となり、トップ10は大きく外れる。
つまり、通常のスコットとノックスのパーオン率は、彼らの本来のパーオンできる能力とは逆を示しているのだ。生のパーオン率ではノックスが69.36%で66.57%のスコットをリードしているが、アジャストしたパーオン率では、スコットが70.31%でノックスの65.87%を大きく引き離している。また、これを出場選手の層の厚さでアジャストすると(スコットは殆どの試合で世界のトップ選手を向こうに回してプレーしていた)、さらにこの開きは大きくなるだろう。
ロリー・マキロイ、アーニー・エルス、ルーク・ドナルド、グレーム・マクドウェル、セルヒオ・ガルシアなど、パーオン率が中程度のプレーヤーたちは、みなスコットと同じ状況だと言える。そして、タフなコースでばかりプレーしていたにも関わらず、これまで5回もパーオン率でトップになっているタイガー・ウッズは、そのスケジュールの厳しさからみても、より素晴らしい。
ちなみに2012年のウッズは、パーオン率29位だったが、アジャストした場合はこれが9位に浮上。そしてパーオン率70.34%でトップだったジャスティン・ローズは、ツアーで4番目に厳しいスケジュールでプレーしており、非常に優秀だ。アジャストしたパーオン率は72.60%で、リー・ウェストウッド(71.35%)、ジェイソン・ダフナー(71.14%)、バッバ・ワトソン(70.56%)、ハンター・メイハン(70.56%)、ジム・フューリック(70.43%)、ルイ・ウェストヘーゼン(70.37%)、スコット(70.31%)、ロバート・ギャリガス(69.84%)のトップ10とは差をつけている。
PGAツアーでは、平均スコアとストロークゲインド/パッティングを毎ラウンドの平均数値を元に調整しているが、もし似たような調整が他のスタッツでも実施されていれば、よい選手の本来のパフォーマンスが反映されるはず。平均飛距離は地面の硬さ、そしてフェアウェイキープはフェアウェイの幅の影響を受けるが、パーオン率が一番そういった相違が大きいのである。