忘れられない7年前の衝撃 イングリッシュ復活に誇らしさ/進藤キャディ解説
2021年 ソニーオープンinハワイ
期間:01/14〜01/17 場所:ワイアラエCC(ハワイ州)
飛距離以外“オール5”のケビン・ナ 4季連続Vの陰に名参謀アリ
2017年にはジャスティン・トーマスが72ホールの最少ストローク記録を更新する「253」を出したように、ビッグスコアが続出する「ソニーオープンinハワイ」。
例年通りの伸ばし合いが展開される中、ケビン・ナが4シーズン連続となる通算5勝目を挙げました。後半12番で3パットボギーを喫した直後に3連続バーディ。パー5の最終18番も獲ってライバルたちを振り切りました。
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7044ydと比較的短いワイアラエCCですが、つくりはタイトでショットメーカー向き。特に14番から左ドッグレッグのホールが続き、ドローヒッター有利となるロケーションをしっかり生かしての勝利だったと言えます。
松山英樹選手が初優勝した2014年「ザ・メモリアルトーナメント」でプレーオフを戦った相手として記憶している方も多いのではないでしょうか。その「メモリアル」を含めてプレーオフ3連敗と重圧のかかった場面で力を発揮しきれない部分もありました。
昨シーズン「シュライナーズホスピタルforチルドレンオープン」でパトリック・カントレーを撃破してイメージを払拭(ふっしょく)。サンデーバックナインの混戦をひょうひょうと抜け出した姿からは、コンスタントに勝ちを積み重ねる自信と余裕すら感じさせます。
そのすごさを端的に表現するなら「飛距離以外“オール5”」。ショットの正確性、アプローチ、パッティングをハイレベルでそろえたスキのない選手です。
今季ドライビングディスタンスを見ると1位ブライソン・デシャンボーの329.2ydに対し、191位の289.5yd。この部門でトップ30に入れる飛距離があれば、世界ランキング1位だって狙えるのではないかと思ってしまうほどの選手ですが、ひたすらに技術を磨き、強みを生かすスタイルを確立できれば、パワーゲーム全盛の時代でも戦えるという証明。世界を目指すアジア人、日本人にとってお手本にできる一人かもしれません。
個人的に忘れてはならないのが、キャディのケニー(ハームズ)さんの存在です。キャディ歴25年超のベテラン。ゲーリー・プレーヤーやリー・トレビノ、レイモンド・フロイドといった往年の名選手たちのバッグも担いだことがあり、ケビンとは長年コンビを組んでいます。
趣味はトレーニングというパワフルな“オーバーフィフティ”で、キャディアソシエイツの理事を務めるなどリーダシップ抜群。キャディとしても、選手をグイグイ引っ張っていくタイプです。思い返せば、タイガー・ウッズの全盛期を支えたスティーブ(ウィリアムズ)さんも、そういうタイプでした。
PGAツアーでは基本的にラインを読まないというキャディが半数以上を占めます。その中でケニーさんは誰よりもラインを読み、選手へ積極的にアドバイスもします。緊張感が張り詰める優勝争いの真っただ中でプレーヤーの集中力も極限状態。自分の意見をズバッと言うのは相当な勇気が必要ですが、選手に自信を与えることもあるのです。(解説・進藤大典)
- 進藤大典(しんどう・だいすけ)
- 1980年、京都府生まれ。高知・明徳義塾を卒業後、東北福祉大ゴルフ部時代に同級生の宮里優作のキャディを務めたことから、ツアーの世界に飛び込む。谷原秀人、片山晋呉ら男子プロと長くコンビを組んだ。2012年秋から18年まで松山英樹と専属契約を結び、PGAツアー5勝をアシストした。