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2021年 ファーマーズインシュランスオープン
期間:01/28〜01/31 場所:トーリーパインズGC(サウス)(カリフォルニア州)

進藤大典 PGAツアー・ヤーデージブック読解

“外野”は騒がしくても…激変リードの静かなスイングにビックリ

「ファーマーズインシュランスオープン」が行われたトーリーパインズGCは非常にタフな舞台です。6月に「全米オープン」を開催予定のサウスコースは、シーズンのPGAツアーで最も長かった昨季と同じ総距離7765yd。さらにことしは2日目に雹(ひょう)まで降るなど気温も下がり、ボールがなかなか飛んでくれない二重苦。4日間の平均スコアは「73.340」と、この5年で最もハードなセッティングになりました。

天候が荒れた2日目を含め、そのサウスコースで3日間オーバーパーをたたかず、トータル6アンダーで回ったパトリック・リード。何よりもスイングの変わりように驚かされました。

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2018年に「マスターズ」を勝ったころは典型的なドローヒッター。フェードを打つときは、独特なハイフィニッシュが有名だったアーノルド・パーマーばりのクラブさばきを見せ、ステッキのようにクルクルと回しながらフェースをコントロールするフィニッシュがトレードマークでした。

昨年9月の「全米オープン」後にデビッド・レッドベターさんをコーチに迎えてからは持ち球がストレートに近くなり、ボールに意思を込めるかのように体までねじる特徴的なフィニッシュも見られなくなりました。まるで練習場で淡々とボールを打っているかのよう。“静かな”スイングという表現が近いかもしれません。

4日間のフェアウェイキープ率64.29%はフィールド13位タイ。今季を通じても同じ数字でランキングは65位。昨季までは最も順位が高かった2018―19年シーズンですら131位という項目ですから、劇的に改善しています。

テキサス育ちで培ったウェッジの技術、勝負強いパッティングとショートゲームはもともと天下一品。ティショットで木がスタイミーになる左ラフへ入れてしまった後半15番も狙い通り50ydほど残してフェアウェイに刻み、得意のウェッジ勝負。60㎝にピタリとつけて難なくパーを拾いました。

相手チームのファンから猛烈なブーイングを浴びるライダーカップやプレジデンツカップでもポイントゲッターとして活躍。今大会3日目10番のルール問題がSNSなどで騒がれましたが、そんなときほど集中力を研ぎ澄ませ、結果を出す選手です。振り返れば、優勝した「マスターズ」も最終日は同組のロリー・マキロイの方がパトロンから大きな拍手を浴びる異様な雰囲気の中で勝ちきりましたね。

リードのチームの絆は強固です。初優勝のときにバッグを担いでいたのがジャスティン・カレイン夫人。いまのキャディは、その弟のケセラーさん。リードにとっては義理の弟になるケセラーさんが、血のつながった兄のようにリードを慕う様子を覚えています。

選手が信頼し、選手を信頼してくれる存在がいるから頑張れる。リードも優勝スピーチで「チームがいたから、きょうの僕がある」と感謝を口にしていました。鋼のような本人のメンタルだけでなく、チームとしての結束力も、リードが度重なる“アウェー”の状況を乗り越えてこられた原動力のような気がしてなりません。(解説・進藤大典)

進藤大典(しんどう・だいすけ)
1980年、京都府生まれ。高知・明徳義塾を卒業後、東北福祉大ゴルフ部時代に同級生の宮里優作のキャディを務めたことから、ツアーの世界に飛び込む。谷原秀人、片山晋呉ら男子プロと長くコンビを組んだ。2012年秋から18年まで松山英樹と専属契約を結び、PGAツアー5勝をアシストした。

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