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佐藤信人の視点 勝者と敗者

マキロイとスピースから見るパットの波

ロリー・マキロイ(北アイルランド)の唯一のウィークポイントといえば、パッティングではないでしょうか。

PGAツアー14勝(うちメジャー4勝)の輝かしい実績を持つマキロイは、飛距離、精度ともにショット力は世界中の誰もが認めるところ。それに対しパットのタッチは、ややオーバー気味なことが多く、彼の唯一の弱点といっても良いでしょう。

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パットの調子次第で結果が左右される。そんな彼が今回ベイヒルの高速グリーンで見せたタッチは絶妙でした。大会のドライビングディスタンス、スクランブリング(パーオンできなかったときにパーかバーディであがる確率)に加え、パットの貢献度を示すストローク ゲインド パッティング(パターで稼いだ打数)で1位と、圧巻のプレーを見せつけました。

パターの名手ブラッド・ファクソンから「もう少し本能に任せて打ってみては」と助言をもらったというマキロイ。パター自体をショートネックのブレードタイプに変更し、グリーン上で気楽に挑んだことが功を奏したといえます。

パッティングもスイングも同じことがいえますが、体の細部やクラブの動かし方などメカニカルな部分を追求していくと、いつしか壁にぶつかります。行きつくところまで行くと、次はメンタルの開き直りが必要です。ただ、これも一過性のもので、またメカニカルな試行錯誤が求められます。このようにツアープロは、メカニカルの追及とナチュラルな考え方の繰り返しを常に行い、試合に挑んでいるものなのです。

そして今回のマキロイと逆行して、現在パッティングに苦労しているのがジョーダン・スピースです。彼はパット巧者で知られ、何度も大舞台で勝負どころのパットを決めてきました。昨季まで必ず平均パット数はツアー1、2位につけ、パットのうまさは彼の代名詞となっています。

ですが、今季は現時点で135位タイ(3月18日更新)と落ち込んでいます。コーチからアドバイスをもらい、いろいろ試行錯誤している様子ですが、なかなかトンネルから抜け出せない状況が続いています。

今年に入り、オーガスタに向けてダスティン・ジョンソンジョン・ラームジャスティン・トーマスと世界ランク上位陣がしっかり結果を残してきました。タイガー・ウッズフィル・ミケルソンといったベテラン勢も調子を上げています。そして、今回のマキロイ。あとは松山英樹ジョーダン・スピースの復調が待たれるといったところでしょうか。

佐藤信人(さとう のぶひと)
1970年生まれ。ツアー通算9勝。千葉・薬園台高校卒業後、米国に渡り、陸軍士官学校を経てネバダ州立大学へ。93年に帰国してプロテストに一発合格。97年の「JCBクラシック仙台」で初優勝した。勝負強いパッティングを武器に2000年、02年と賞金王を争い、04年には欧州ツアーにも挑戦したが、その後はパッティングイップスに苦しんだ。11年の「日本オープン」では見事なカムバックで単独3位。近年はゴルフネットワークをはじめ、ゴルフ中継の解説者として活躍し、リオ五輪でも解説を務めた。16年から日本ゴルフツアー機構理事としてトーナメントセッティングにも携わる。

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