松山英樹の確かな成長、そして、「19」への淡い期待
2015年 マスターズ
期間:04/09〜04/12 場所:オーガスタナショナルGC(ジョージア州)
松山は5位でも後悔 「勝てる」マスターズだった
ボールを見送る強い視線は、確信に満ちていた――。ジョージア州のオーガスタナショナルGCで開催された今季のメジャー初戦「マスターズ」最終日。5アンダーの10位タイから出た松山英樹は1イーグル、4バーディ、ロリー・マキロイと並ぶこの日のベストスコア「66」をマークし、通算11アンダーの5位でフィニッシュした。
4度目の出場で、12位タイまでに付与される来年の大会の出場権を獲得。2013年「全英オープン」の6位を上回る5位は自身のメジャー最高順位となり、日本人史上初のメジャー制覇の夢に現実味を覚えさせた。
<< 下に続く >>
苦しんだ初日からの3日間。単独首位を走ったジョーダン・スピースとの差は前日までに11ストロークと開いていたが、松山は最後に貫録のプレーを見せた。
前半7番までに5ホールで1パットパーを拾う我慢の展開。8番(パー5)で最初のバーディを決めて勢いづいた。10番で左足下がりのライから残り207ydの第2打をピンそば60cmにつけ、続く難関11番で7mを沈めて連続バーディを決めた。
圧巻は13番(パー5)。右サイドの林、枯れた松の葉の上から放ったアイアンでの2打目は、木の間を抜けて美しいフェード軌道を描いた。「打ちやすいライだった。前に木はあったけど、思った通りに打てた」という一打でピン左6mにピタリ。イーグルパットは、両ひざを折った瞬間にカップに吸い込まれ、右手の拳を力強く振り下ろした。
最終18番、フェアウェイから打ち上げの2打目はピン奥3mについた。グリーンサイドに敷き詰めるように並んだ緑の椅子から、パトロンたちがひとり、またひとりと腰を上げる。バーディパットが沈んだのと同時に、万雷の拍手が降り注いだ。日本を飛び出した23歳が、世界トップクラスのマスターのひとりとして認められた瞬間だった。
片山晋呉が2009年に記録した歴代日本人史上、最高位の単独4位には及ばなかったが、4日間アンダーパーをマークしたのは日本勢初。通算11アンダーも日本人の最少スコアだ。だが、記録について松山は喜びを口にしなかった。「60台で回れたのはすごく嬉しい。そこは良かった。(昨年は)メジャーでトップ10になかなか入っていなかったので、そこは良かった」。
ただ、勝てなかった。それが口惜しい。例年よりもソフトなグリーンだった。「今年のセッティングだったら勝てる」と実感していた。
だからこそ「勝てないと後悔は残る。嬉しい気持ちもありますけど、やっぱり優勝を目指してきているので、悔しい気持ちがある」。上位フィニッシュにも、満ち足りた気分はしない。
今後は2週間のオフを取り、4月29日(水)開幕の「WGC キャデラックマッチプレー」(カリフォルニア州TPCハーディングパーク)で復帰する見通し。
「悔しさは今までより少ないが、まだまだできたという感覚もある。1年後、ここに戻ってくるが、その時に今年以上のものを出せるように、しっかり作っていきたいと思います」。4度目の出場で、キャリア最高の5位。輝かしい成績にも、ただただ、グリーンジャケットへの思いが強くなるだけだった。(ジョージア州オーガスタ/桂川洋一)