マスターズ・ベストショット その5(2013年最終日版) by 堀江貴文
2013年 マスターズ
期間:04/11〜04/14 場所:オーガスタナショナルGC(ジョージア州)
【WORLD】A.スコット 愛しのグリーンジャケット/マスターズレビュー
Golf World(2013年4月22日号)texted by Jim Moriarty
自分に対する疑念に苦しみ、失望感に襲われる。アダム・スコットが経験してきた過去により、オーガスタナショナルでの光は次第に減少するかに思われたが、全ては明るい未来に向けた挽回のステップとなった。アルゼンチン出身アンヘル・カブレラとのサドンデスプレーオフ2ホール目でバーディを決めると、突如大陸全土には新たな生命が宿った。ジョージアでスコットが父親フィルと10番のグリーンで熱いハグを交わした瞬間、オーストラリアではコーンフレークを食べながらシャンパンで優勝を祝しただろう。遂にグリーンジャケットが地球の裏側に到達した。スコットにとってのメジャー初優勝、そしてオーストラリア人選手として初のマスターズ制覇。1人の夢と国の密接な繋がり合いが見て取れた瞬間となった。
「オーストラリアはスポーツが盛んな国としての誇りを持っている。スポーツが盛んな他国と同様に、我々はいかなる競技であっても自分達がベストだと信じているんだ」と優勝後に語ったスコットは、「自分の国ではゴルフはとても人気のあるスポーツ。世界で最も有名な競技ではないかもしれないけど、多くの偉大な選手により歴史が紡がれている競技だ。(マスターズ優勝は)僕らが達成出来なかったこと。まさか自分がオーストラリア人として史上初めて優勝するなんて、本当に信じられないことだと思う」と喜びを表現した。
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スコットの心の師匠であり、ヒーローだったグレッグ・ノーマン(マスターズのゴーストに祟られたプレーヤー)が2009年のプレジデンツカップで彼を主将推薦で選出した時、彼はキャリアのどん底にいた。彼にとっては単に選出されたのではなく、それは命を繋ぎ止めるライフラインのようなものとなった。「自分にとっても大きな瞬間だったね。実力を試す様な機会だったし、当時の自分はお世辞にも良い状態とは言えなかった。自分でも満足のいくプレーが出来ていなかったから。ただ、グレッグは主将として自分に信頼を寄せてくれていた。彼を失望させたくはなかったんだ」。
スコットはキャディーを替え、2011年にタイガー・ウッズに解雇されたニュージーランド人のスティーブ・ウィリアムスとコンビを組んだ。ウィリアムスはウッズが記録したマスターズ3勝の際もキャディーを務めた人物で、今年のプレーオフでも、日が沈む難しいコンディションの中、スコットのウィニングパットのラインを見事に読んだ。2011年はじめ、スコットはメジャー大会に標準を合わせる為、スケジュールを見直した。「当時は出場する大会数を減らしたけれど、良い練習が出来ていたんだ」。32歳のスコットはスイングの美しさの評価が高く、勝利数よりもファッションモデルを連想させるルックスに注目が集まっていた。「優勝の機会も減っていた。特にメジャー大会でのチャンスがね。だからこそ自分の目標はメジャー大会優勝だった」。
オーガスタで成功を掴む前、昨年の全英オープンでは大崩れを経験している。ロイヤルリザム&セントアンズでの最終日、ラスト4ホールで連続ボギーとし、分厚い地層に阻まれるかのようにアーニー・エルスにクラレット・ジャグを献上した。キャリアを左右する敗退とも受け止められる瞬間だったが、スコットは笑顔を見せ、「上手く大会をフィニッシュ出来なかった。ただ次の機会には、自分は次があると信じているから、今回よりも良いプレーが出来ると思う」と、英国で語ったものだ。