マスターズ・ベストショット その5(2013年最終日版) by 堀江貴文
2013年 マスターズ
期間:04/11〜04/14 場所:オーガスタナショナルGC(ジョージア州)
【WORLD】A.スコット 愛しのグリーンジャケット/マスターズレビュー
Golf World(2013年4月22日号)texted by Jim Moriarty
スコットはカブレラ、ブラント・スネデカーと1打差をつけられて最終日を迎え、前の2サムには同じくオーストラリア出身25歳のジェイソン・デイがいた。デイは最終日スタートからバーディ、イーグルと上々の滑り出しで8アンダーとしてトップグループを脅かす。そのデイが6番でボギーを叩くと、カブレラがリード。雨が降ったり止んだりという気象条件下で、アヒルを意味する通称エル・パトこと43歳のメジャー2勝経験者は、9番まででスネデカーに2打差、スコットとデイに3打差の9アンダーにスコアを伸ばす。10番でこそボギーとしたものの大した影響は無かった。
しかし、その後パー5での2ホールで1オーバー。スコットは両ホールでバーディとして追い上げを見せる。結果チャンピオンとなるスコットは、13番での2打目に救われることに。クリークのすぐ上のバンクにボールが引っかかり窮地を脱した。温暖な冬の気候により芝が厚く育った恩恵、或いはフレッド・カプルスが1992年のマスターズで優勝した際12番ホールでみせたブレイクに近い幸運が働いたのかもしれない。その時点では、オーストラリア人史上初の優勝者に近かったのはデイの方。13番から15番まで3連続バーディを記録し、2打差をつけて首位に浮上。だが16番ではグリーンオーバーのショットを放ち、17番ではフロントバンカーに捕まり後退。スコットとカブレラより順位を落とした。
<< 下に続く >>
スコットは最終18番ホールを8アンダーで迎え、8番アイアンでのショットをホールから7.6m付近に寄せた。パットはホールの左サイドにかかり、時計回りに回ってカップ。スコットの雄叫びは観客の「やってやれオージー!」という声援の中でも耳に届く大きさだった。
スコットがクラブハウスで待機していた中、カブレラはビッグドライブを決め、7番アイアンでピンそばに寄せてバーディを奪取しプレーオフに持ち込んだ。18番ホールに戻るカートの中、スコットはドライバーを担当したオーガスタナショナルメンバーのジム・デービスに、あとどれくらいで日が沈むかを聞くと、すぐさま「大丈夫。早めに決着をつけるつもりだ」と付け加えた。しかし実際にはスコットが望むほど早く決着はつかなかったと言える。プレーオフ1ホール目(18番)では決着がつかず。次の10番ホールにまで持ち込むと、両者共にフェアウェイをキープ。そして、カブレラは再びバーディチャンスとなるショットを披露。しかしパットは惜しくもミス。そしてスコットがきっちりと決め、地球の反対側に勝利がもたらされたのだった。
最終日は雨風に吹かれる最悪のコンディションだったにも関わらず、初日はオーガスタというよりもアトランタ・クラシックを彷彿とさせる天気だった。実に93人中45人の選手がパーよりも良いスコアを記録。初日を終えて首位を分けたのは同コースが嫌いな人物、そして優勝が見込まれていなかったオーストラリアのホープ。昨年のマスターズでは優勝するのに必要な技量が無かったと認めたスペイン出身のセルヒオ・ガルシア、そして3年前に初めてオーガスタに打ち負かされたと語るオーストラリア出身のマーク・レイシュマンが66で首位タイに。コースは極めて単純で、フィル・ミケルソンは過度にリスペクトしてしまったと愚痴をこぼすほど。翌日には76とスコアを落として優勝争いから脱落した。
ミケルソンがスコアを落とした2日目には再び議論を呼ぶ問題が発生。オーガスタナショナルが国際ルール機構と化し、まずはジュニア選手がその餌食に。弱冠14歳にしてオーガスタ出場を果たしたアジア太平洋アマチュア王者グァン・ティンランだったが、その動きは遅かった。ティンランは2日目にスロープレーを犯したとして1打の罰則を科された。5時間半に及んだラウンドは芸術的と称されたものの、NBCアナウンサーに「彼は誰よりも疑いようのないルール違反を犯した」と指摘された。